2014 5月 の日記


5月7日

闇が手のひらを泳ぐ
吹き出した息で、雲が動いていく
今夜わたしは夜空です
身体があるのだ
身体が広がるのだ
膨らんで
スノードームの天井を破って
耳元で星が鳴る夜空です

お昼に放送しているバラエティ番組、「ごきげんよう」は
ゲストがサイコロをふり、出た目に書かれたテーマに沿ってトークをする
国民的番組である。
母が「ごきげんよう」を見たらしいのだ。

「サイコロを振って、話題を決めるじゃない?
何が出たのかは見なかったんだけど、まあ、‘面白い話’とか出たのかな」

「なんでもいいから、面白い話をしてください」
あら、そんな鬼みたいなサイコロだったかしら。

5月9日

姉の家に行きました。
1歳10ヶ月の姪がおままごとをして、みんなに飲み物を飲ませており
わたしにも何やら配膳してくれました。
ありがとう、おいしい、ごくごく。
しかし「遊ぼう」と誘うと、それだけで泣き叫ばれ、
それから一時間ほど後に抱き上げようとすると、全力で抵抗されました。

つまり、こういうことではないでしょうか。
「おとなしい犬が部屋にいても構わないし、
自分から撫でに行くぶんには気にならないのだけれども、
犬が近づいくると、なんかすごく怖い。」
自分で納得がいって、ああ、気持ちは分かるよ、犬ねぇ、と。
ついでに犬の気持ちも分かった、と。

5月10日

「あんな、俺な、前に女の子の分と二つマティーニ頼んだら
中に入ったあるオリーブが、
二つともピックのところで割れててんやんかぁ」
と、殿方に言われたわたしは
その夢の中で
「あ、どうしよう。
これは、口説かれてるな!」
と戸惑っていました。

嫌いじゃないのよ、そういう、ユニークな殿方も。
口説かれてると感じるポジティブすぎる自分も。

5月11日

夏みかんでマーマレードを作りました。
天気が良く。
暑く感じるほどの。
ジャム喰いは幸せでした。
また、朝、目覚める楽しみ。
お酒呑みだと
朝から呑んでいるわけにもいかないでしょうが
ジャム喰いは
朝でも昼でも夜でも好きな時に
ジャムが食べられます。
ビバビバ。
バーでジャム食べたって構わないでしょう。

ところで、酒場に関してですが。
「バー」という単語を口にする時
わたくしごときがBARですって、ガキが粋がってけつかる、くわーっ!
という照れ、自意識の過剰さ、自嘲のアヒル的な引き笑いが生じるので
なるべくカタカナの「バー」か
いっそ「婆」に近い気持ちで発音します。

5月12日

庭の薔薇が強風にあおられ
豪快なヘッドバッキングを繰り返していて、
ヘッドバッキングを通り越し
逆ダイの域でした。
咲き乱れつつの、トゲトゲを装備しつつの、ヘドバン&逆ダイ。赤い薔薇。
それはもう、バンギャル。
ゴシック&ロリータ。
そしてユザワヤへ。

2014年5月15日

いい季節だ。
昔は苦手だった薬味が年々好きになって、気温が高くなる季節を、「いい季節」と形容できるようになった。
むろん薬味が美味しくいただけるからである。
夜、半袖で食卓につき、こんなに冷や奴が食べたかった、と、冷や奴を食べながら嬉しくなる。
カツオのたたきも、そうめんも、薬味を食べる口実にしか過ぎない。
カツオは薬味を乗せる台。
みょうががうまい。
わたしがイギリス人ならば、クラッカーに薬味を乗せてつまんでいただろう。

しかし今の季節を「一年で一番いい季節」と形容することに抵抗があるのだ。
こんにちはの後で天気の話をすると、そういう表現が出てくる。
日差しが強くとも汗をかかず、風が強くとも寒くはなく、森林浴をしても蚊にさされないこの季節、
いかにも素晴らしいが、
どうにも他の季節が、陰で涙を堪えている気がしてしまう。
「大丈夫」「気にしてないよ」「四季がある美しい国って、褒めてくれたこと忘れない」と言いながら。
ハンカチを噛んでいるのではないか。
そんな季節の肩を抱いてやりたい。
お前にはいいところがあるよ、いっぱい知ってるよ。
これは人気者を素直に褒められない、薬味好きの発想かもしれない。
国際的なスターの来日シーンを見ると、警備頑張ってるなぁ、ご苦労様、と考える。
ジャイアンツは嫌いではないが、ジャイアンツファンは敵だと思っている。
クラスの人気者は別の世界に
身体と声を張らない、裏回し芸を好む。
「俺は好きだけどね」と今回の不採用を励ます。

2014年5月16日

セロリの飛び出した袋を持ったまま、買い物の途中で喫茶店に入った。
昼間だけれど薄暗くて、分煙されていなくて、船舶の模型が飾られている、古い喫茶店。
お店の奥さんは初めてのわたしに対して優しく、腰をかがめて丁寧に注文を聞き、
常連らしき紳士からは、歩きながら家族のような口調で注文を取った。
ベルベットの椅子に腰掛けて飲む、丁寧なコーヒーは美味しい。
温められたカップを唇に当てると、ぽってりとした優しい厚みと熱が伝わり、
キスの感覚を思い出した。
おい、てめえ、久しぶりにキスでもしたいぜ。
手帳を開き、そう書いた。
それから手帳に昨日の日記を書いた。
「相手に腹が立っても、命まで取られることではないなら、
そうねって言ってあげてもいいんじゃない?というアドバイスを受ける。
いまだ仲直りできず。」

2014年5月17日

ケンカをするなんて効率が悪いこと。
時間と労力の無駄である。
だからといって、しないわけにはいかないのが難しい。
血の気が多い。
月経のとき、ドロッといくあれ。
血の気が目に見えたら、ああいう色。
血の気のかたまり。

2014年5月18日

薄着の季節になると雑誌の表紙がこぞってダイエットという文字を書く。
その気持ち、分かります。
Tシャツの半袖からたっぷりとした腕が生えており、
それが嬉しくて鏡に向かって盛り上ってみたところ、
生命と二の腕が愉快な程ぶるぶるでした。
頭の頭痛が痛かったです。
食欲と眠気の鉢植えです。

2014年5月19日

人間がどう生きて行くかについての文章を読んだんだよ。
他人を認めることとはどういうことか、
赦すこととはどういうことか、
意見を単なる生意気で済まされないための心構え、
そんなことが書いてあって、
読んだら芯から強くなった気がして、
外へ出たら、
影が人の形に見えて怖いとか、
落ち葉の形が怖いとか、
そんなことで泣きたくなって
走って家に帰ってきた。

2014年5月20日

世の中には
性欲をぶつけられる仕事と、
性欲をぶつけられない仕事が
あるのではないか。
何かを見て「おお!性欲ぶつけてますね」と感じることはあるし、
わたしも性欲をぶつけている。

ただ、性欲がぶつけられない仕事も、世の中にはありそうなのだ。
肉体的に疲れることは出来たとしても。

ひとが何かをするときに、心の中で燃料を燃やすとする。
性欲と同じ燃料を燃やすことと
違う燃料を燃やすことがある。
それが何なのかは今日うまく言えない。
真剣にやる、とか、倫理観、とか、やるせなさとか、心の持ち方、とか
そんな言葉が浮かんでくるけど、
どの言葉とも違うように思える。
これはもう少し、継続して考える。

2014年5月21日

夢を見たよ。
あなたはわたしを抱き寄せて、
耳元に口をつけて囁いたね。
「ねえ、お願いがあるんだけど。
手品をするから、僕の口にこの砂を流し込んで」
それは200g程度の砂でした。
夢の中で「いいよ」って言っちゃったけど、
砂って雑菌がいるし、そのお手伝いはできないんだよなあ。
だから、
今、改めて断わります。
今、会いに行くみたいに、断ります。

2014年5月22日

帰り道、雨は大丈夫だった?
こちらは雨の降り出したとき、ドラッグストアで買い物をしていました。
ガラスの全面窓の向こうが急に真っ暗になって、屋根と道路に叩きつける雨の音が聞こえて、雷がピカッ。
その後ドッカーン!と鳴り響き、
レジのお姉さんは「きゃー!」って悲鳴をあげました。
聞けばお姉さんは雷が苦手で
ゴロゴロ、ドッカーン!が聞こえないように
家にいる際に雷鳴が轟くと、耳にティッシュを詰めているらしいの。
なんだか可愛いなって思って
「雷が怖いのは可愛いですね。
それにティッシュは、怖がるついでに耳の掃除にもなりますね。」
と言ったのね。
そういうおしゃべりをしながら、なごやかに会計を済ませたの。
それは済んだ話なんだけど、
今日みたいに、よく行くお店の人と一度話をしてしまうと、
次に行くときにちょっと緊張してしまうから、もうすでにちょっと緊張してる。

Back to top