Category: おやつ


8月21日

『メロンパンとブラジャー』

「メロンパンってそんなに美味しいか?」
「女子め」
「流行に踊らされているのではないか」
殿方にそう言われて、思った。
「好きだよ、だって、メロンパンって、ブラジャーだもん!」 と。
ついでに思った。
「お前らだって好きだろ、ブラジャーは!」 とも。

メロンパンは人気が高く、
姿かたち、名前までも各社、創意工夫がなされ、限定、幻、個数制限の乱れ打ち。
街のパン屋さん、スーパーやコンビニ、学校の購買部はもとより、
専門店が車で街を移動したり、
サービスエリアやデパートで販売されて大行列ができたりと、
大変に珍重されている。
初めてメロンパンを食べた日のことは覚えていないが
わたしの人生にメロンパンが確固として登場した日を覚えている。
小学生のときだった。
学校から帰ってきた2つ年上の姉が
「ファミリーマートのチョコチップメロンパンが欲しい」 と言った。
仲良しグループで、揃って同じものを食べるのだ、と。
パンについて、
パンって食べると美味しいよね!程度にしか感じていなかった初心な小学生は、
年上の少女たちがする、秘密の儀式めいた行動と
そのお店のそのメロンパンじゃないと駄目、
と言い切らせるほどの魅力的なメロンパンに蟲惑された。
その日からメロンパンは 「特別に素敵」 で 「ちょっとおねえさんみたい」 なのだ。

まあるいパン生地。
軽やかに走る、メロンの線。
なんたって響きまで可愛いのだ。
めろん、ぱん。
白眉は、ふくらみからこぼれるほど施されたクッキー生地の、可憐さ。
グラニュー糖が反射するキラキラした光。
ふわふわしたものを包む、素敵なデコレーション。

例え落ち込むことがあっても、体調が悪くても、見せる予定なんてまるでなくても
そこがふわふわと、キラキラとしているだけで、
心が強くなり、凛としていられる部分を、わたしたちは知っている。
ぷっくりとしたカップ。
ふくらみに添うレースの刺繍。
ため息がでるようなモチーフコサージュ。
煌めくラインストーン。
そういうものが「ちょっとおねえさんみたい」で照れくさかった少女の頃から、
優しく包んでくれている。

クラシカルなメロンパンは、シンプル。
けれど清楚なレースがたっぷり付いている。
メロンパンにしたって、ブラジャーにしたって
嫌いであるわけがない。

さて、「お前らだって好きだろ!」 に異論は無いものとして話を進めるけれど、
「そんなに美味しいか?」 について。
殿方に逆にお尋ねしたい。
「ブラジャーだったら、何でも好きなの?」 と。
「コンビニのメロンパンは、つまり。コンビニの雑誌棚で見られるブラジャーだからね」 と。
コンビニパンの昨今のクオリティ上昇たるや、目を見張るものがある。
コストパフォーマンスに優れたパンも好きだし、それぞれに味わい深いけれども。
メロンパンはブラジャーなのである。
両者を引き合わせれば同じではないだろか。
限定だの、幻の~だとと訴えかけてくることも。
若い子たちのエネルギーはコンビニでシンプルに補給されることも。

時折、食べる前の方が美味しかったなぁ、と思うメロンパンに出会う。
あの気持ちは、
マネキンが着けてる方が可愛かったなぁ、としょんぼりする試着だ。
メロンパンの、
パン部分は無くても良い!と考えている女のひとは、
ブラジャーのパッドなんて洒落くさいわ!と考えている潔いタイプで、
逆にメロンパンのクッキー生地だけを集めたお菓子。
あれはもう、メロンパン界のユザワヤなのだ。

食べられないけど、味が分かるものがある。
雲を食べてみたい、と思ったことがないだろうか。
雲を食べたら、きっと甘い味がする。
食べたことも無く、食べられもしないけど、味を知っているのだ。
ブラジャーもそういうもののひとつ。
見ただけで嬉しくなる、ふかふかの、メロンパンの味だ。
あれは、まあるくてあまい味のかたち。

4月3日

かつて身体が小さかった頃。
お菓子を作る母の横につき、おてつだいをしました。
使い終えた道具の汚れは、
環境のためにも、我が家の排水溝のためにも
布や紙で拭い、大まかに綺麗にしてから水洗いをします。
入りくんだ形で、汚れを拭き取りにくい泡立て器。
これに付いたバターや生クリームを
指で拭って舐めながら綺麗にするのは
「こどもの仕事」でした。
許可を得て行うお行儀の悪い仕事。
バターとお砂糖の混ざったじゃりじゃりした舌触りと原始的な甘さ。
お菓子の焼きあがりを待ちながらこどもの仕事をするのは、
手作りおやつの楽しみのひとつです。

最近、シフォンケーキを焼きます。
生地をオーブンに入れ、洗い物をする時に
やはり時折
「子どもの仕事」が行われます。
子どもだったわたしは
もう、だいぶ、けっこう、かなり、しっかりと大きいので
昔ほど仕事に真剣に取り組みはしないけれど、
ハンドミキサーに付いた、ほの甘い卵白と砂糖のメレンゲは、
幸せな記憶の味です。
ベタベタと甘く、こびり付くのです。

4月6日

バニラビーンズを割って中から種をこそげ取るのは面白いです。
虫のお腹を開いて卵を出しているような錯覚に陥ります。
甘い香りを放つツブツブをナイフに乗せて
「虫みたーい!」って毎回大きな声で口に出します。
気持ちを誤魔化したいときは、いつでも大きな声で言います。

4月15日

赤福はかわいいね。
整列して、一見おしとやかなんだけど、小粋な感じ。
つやつやと整った形を見ていると、
噺家の座る、紫の座布団を思い出すんだ。
だからかな。
赤福って口が達者そうなんだよ。
気取ってないけど上等なんだ。
あんまり愛らしいから、思わずキスしたんだけど
あんこが、口についてさ。
仕方ないから食べちゃったよ。
夜中だったけど、これは仕方ないなぁ。

赤福を持ち帰ったのは母でした。
「今日仲直りした」とケンカの顛末を報告すると
「よかったね。実はそれは、私が旅行中、神仏にお願いしたからなのよ。」と神妙な顔で言いました。
神社仏閣に立ち寄ると、
「ついでに、直近のお願いなんですけど」に
カミサマに頼んでくれたらしく。
多方面にご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。
(すぐ取り計らってくれるなんて、カミサマって活発ね。)

4月22日

「美味しくて、けしからん!」
「こういうもの売らないで欲しい!」
文句を言いながら、
とりとめなく、チョコをつまみて。
ナッツもつまみて。
ミックスナッツもまた、けしからぬ商品なり。
アーモンド、くるみ、マカデミアナッツ、カシューナッツ。
一度封を開くと、一通り食べねば仕方がない。
ものをいい、はらもふくくるわざなり。

2014年12月16日

あのさ。
片想いの時は、相手の分身とずっと一緒にいられる気がするね。
心の中に住んでる、小さな君と色んなものを見て、想像で一緒に居られて、それで満足なんだけど。
君のことが勝手なイメージじゃなくなったときに、
君の分身は側にいなくなっていて、
君は君だけになりました。
だから、君の不在をありありと感じられて、会いたくなるんだよ。

そんなこと、考えながら
[噛めば噛むほどチョコレートの味わいが染み出すプレッツェル]という触れ込みのチョコレート菓子を食べていたのです。
確かに、噛めば味は染み出すけれど、
噛めば噛むほど口の中から無くなるプレッツェル、という表現の方が正確だと思いました。

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